BL小説界の大御所のお一人、榎田尤利先生の作品を、読まれたことがありますか?
デビュー作「夏の塩」が高い評価を受け、以後20年以上、第一線で活躍されている先生
最近、BL小説を読み始めた方でも、先生を御存じの方は多いかもしれません
作品を読んだことがある方も、いらっしゃると思います
榎田先生は、長年活躍されていますし、何より100作以上の作品を発表される多作な方です
そのため、触れる機会も多いと思います
ただ、先生は、「交渉人」や「nez[ネ]」などのシリーズものが、特に人気です
そのため、シリーズものを読んだことがあっても、
1冊完結の作品を読んだことがない、という方は、結構いらっしゃるのではないでしょうか?
そうした方に、おすすめなのが、作品集「聖夜」です
「聖夜」のあらすじ
中学・高校と同級生だった縞岡(しまおか:シマ)と、雨宮那智(あまみやなち:アマチ)
10年後に再会した2人は、再び惹かれ合いますが、お互い別の相手がいました
諦めた方がいいと思いつつ、諦めきれず、苦しむ2人の物語です
「聖夜」の感想
2人が、お互いを好きになるほど、苦しみが深くなっていくのが、読んでいて辛かったです
あまりに苦しい場面が多く、正直「もう他の人でいいんじゃ・・・」って思ったりしました
でも、恋愛は、頭では、どうにもならないことが、ありますもんね
自分は、好きな相手と一緒にいたい
でも、大事な人達の幸せは、自分が好きな相手と離れることでしか、成立しない
みんなが幸せになる道がないとき、人はどうするのが正解なのか
真面目で誠実な2人だからこそ、悩んでしまう
切なくて、可哀想で
幸せになってほしい、そう願わずにいられない2人でした
ヨネダコウ先生のイラストが切ない
イラストは、ヨネダコウ先生です
ヨネダ先生の絵が持つ、独特の温度や質感が、内容にとても合っていると思いました
個人的に、「聖夜」は、寒い夜に、密やかに育まれる愛情、というイメージなのですが
「寒い」「夜」「密やか」って、ヨネダ先生の絵がもつカラーそのものだなと
特に、表紙絵の、子供の頃の2人や、再会した後の2人が、どちらも切なくて愛しいです
装丁も美しいし、できれば紙媒体で持っておきたい1冊かなと思います
作品集「聖夜」には、別作品「名前のない色」も収録されています
作品集なので、同時に「名前のない色」という初期作が収録されています
こちらも、素敵なお話です
若手編集者の藤野渉と、アーティストの水窪あきら(ミサ)
藤野が、ミサの担当になったことから始まる物語です
藤野さんの健気さや誠実さが、ミサさんを救い、ミサさんの努力が藤野さんを救う
片方が、アーティストなためか、こちらの恋は「聖夜」よりも破天荒です
でも、お互いが救いになっている点では、「聖夜」と同じかもしれません
藤野さんもミサさんも、とても魅力的なキャラクターなので、こちらの作品もおすすめです
「聖夜」は、切ない恋をじっくり味わいたい方におすすめです
- シマくんが、アマチくんを思う気持ちが、ずっと切ないです
- 大人になっても、忘れられない恋に苦しむ2人の幸せを願いたくなります
- 一途に人を思う、恋愛の切なさを味わいたい方におすすめです
- アーティストと担当編集者の物語に興味がある方は、同時収録「名前のない色」もおすすめです