たまたま入った本屋さんで買った本が、実はもう絶版になっていて、買えたのはラッキーだったと後から気づく
そんな経験は、ありますか?
凪良ゆう先生の過去作品には、現在、紙書籍として販売されていないものが、何冊かあります
中には、電子書籍で読むことが、できるものもあります
しかし、電子書籍化もなされず、どんな媒体でも読めなくなっている作品もあります
この「未完成」も、2023年8月現在、そんな境遇に置かれた作品です
とても素敵な作品なのに、販売元が休刊しており、紙でも電子書籍でも販売されていません
「教師と生徒」という関係の苦しさや甘さを、じっくり味わいたい方におすすめの1作です
ぜひ再販してほしい作品の1つです
「未完成」あらすじ
家に居場所がない高校生の瀬名さんは、教師の阿南(あなん)さんのもとに通うようになります
恋心を自覚した瀬名さんは、阿南さんを必死に口説きますが、受け入れてもらえません
まだ高校生だという理由で、家庭も恋愛も思うようにならず、苛立ちを募らせる瀬名さん
「教師と生徒」という関係を大事にする阿南さんと、何度も衝突します
2人が幸せになる道は、あるのでしょうか?
(初版:2009/4/17 白泉社花丸文庫BLACK、新装版:2014/1/14 プランタン出版プラチナ文庫)
「未完成」感想
2人の交わらない思いが、読んでいて苦しかったです
教師と生徒なので、完全な上下関係があり、世間からは大人と子供として扱われる2人
その立場を越えたい瀬名さんと、立場をわきまえようとする阿南さんの苦悩が、辛かったです
葛藤の末に起こす瀬名さんの行動は、時に暴力的ですし、犯罪?と思う場面すらあります
ただ、そのコントロールが効かないこと自体が若さですし、未熟さだなと
激しい瀬名さんを読みながら、それが子供ってことだし、だからうまくいかないんだと切なくなりました
どちらの立場も理解できるし、うまくいってほしいと願いながら読んでいました
ちなみに、新装版には、最後に2短編「Young Swallow」「さなぎ」が、追加されています
どちらも、本編の余韻に浸れる素敵なお話でした
新装版「未完成」は、情感豊かな草間さかえ先生のイラストになっています
初版は、楠本弘樹先生がイラストを担当されていましたが、新装版は、草間さかえ先生になっています
草間先生は、「沈黙」「苦しさ」といった、人の「陰」を、行間からすくって描かれるイメージです
この作品も、2人の立場の違いから来る苦しさや痛みが、表紙からだけでも、すごく伝わってきました
描かれる2人のまとう空気が、静かだけど熱くて、とても素敵でした
「未完成」は、「教師と生徒」の苦さと甘さを味わいたい方におすすめです
- 好きなだけでは、乗り越えられないことがあります
- 子供は~しなさい、大人は~しなさい、という不文律が、2人を苦しませます
- 苦しみ、もがきながら、「好き」の先を一生懸命考える2人が愛しいです
- 「教師と生徒」という立場の違いからくる苦さや甘さを、味わいたい方におすすめの作品です
最後に:ぜひ「未完成」の再販をしてほしいです
- 紙媒体としても電子書籍としても、現在販売されていません
- どうか出版社のみなさま、販売してください
- 本屋さんに残っている書籍を見つけたら、手に取ってみてください