同性の友達を好きだと気付いたとき、皆さんならどうされるでしょうか?
告白して断られたら、友達としての関係すら終わってしまう
そうした恐怖から、好きだと言えない、気持ちを知られるわけにもいかない
そんな葛藤に苦しむ主人公のお話です
一途な恋を読みたい方に、おすすめの作品です
「三千六百五十日の抱擁」あらすじ
モデルの逢沢春翔(あいざわ はると)さんは、岐阜の高校1年生
クラスメイトで、剣道部員の樫本博臣(かしもと ひろおみ)さんと、仲良くなります
しかし、すぐに春翔さんは、東京に引っ越すことになります
その後、離れて暮らすようになった2人は、毎日電話するようになります
次第に、樫本さんへの恋心を自覚し、思いを募らせるようになった春翔さん
しかし、友達でいられなくなることを恐れ、好きだと言えないまま、電話を続けます
はたして、樫本さんへの想いは、実るのでしょうか?
(2022年1月20日 心交社ショコラ文庫より発売)
「三千六百五十日の抱擁」感想
春翔さんが、ずっと一途で、一生懸命で、本当に愛しかったです
モデルをするほど、ルックスが良いために、余計なトラウマを抱えてしまうのが不憫ですが
そういう境遇の中でも、一生懸命に頑張る春翔さんが、いじらしかったです
好きな気持ちを隠さないといけないって思うのも、わかります
相手が、同性の友達ならそうだよねって感じでした
大事な人との関係ほど、変える勇気が出ないですもんね
本作は、表題のように3650日=10年の間の2人が、少しずつ描かれています
劇的な変化や出来事は、それほど起こりません
中には、じれったいと感じる方もいるかもしれません
でも、この2人には、これだけの時間が、必要だったんだろうと思います
穏やかに、ゆっくりとした時間が進む、優しい、素敵な作品でした
一夜人見先生のイラストが、美しいです
とにかく、表紙が、美しいです
構図も素敵ですよねえ
芸能人の春翔さんは、明るくて淡い色味で、フワフワしている一方で
社会人の樫本さんは、スーツを着て、スーパー袋を抱えて、地に足がついていて
全然違う2人が、電話を通してつながっている感じ
2人の性格や絆が、細かい部分まで表現されていて、ホントに美しいです
あと、本文中のイラストは、お互いの手の描かれ方が、特にいいなと思いました
別に、手がフォーカスされるイラストはないんですが
我慢している気持ち、相手を思わず触ろうとする気持ちが、手だけからも伝わってきます
口絵の樫本さんも、男らしくて格好いいし、一夜先生スゴイです
切なく募る恋心を、じっくり味わいたい方におすすめの作品です
- 何年もかけて、絆を深めていく2人が描かれています
- 時間をかけて想いが募っていく過程を、楽しみたい方におすすめの作品です